ニューズウィーク日本版の公式サイトに、先日次のような驚くニュースが掲載されました。
「マックフライに使う物質で毛髪再生に大成功」
記事タイトルにあるマックフライとは、皆さんご存じのファーストフードチェーン店マクドナルドの看板メニュー『フライドポテト』のことです。
そんな身近の商品の原材料に発毛効果があったのかと、ツイッターやフェイスブックなどのSNSでもこのニュースは話題になり、「ちょっとマクドのポテト買い占めてくるわ!」「マックでバイトすればフサフサになるかも」なんてコメントをしている方もいました。
しかし、本当にマクドナルドのフライドポテトを食べれば髪は生えるのでしょうか?
ニューズウィークの記事タイトルがあまりにもインパクトがあり、きちんと記事の内容を読まれていない方が多いように感じましたので、この点について本記事ではわかりやすく解説します。
近所のマクドナルドでLサイズのポテトを大人買いするのは、この記事を読んでからにしてくださいね(笑)
マクドナルドのポテトを食べても髪は生えない!
まず結論からお伝えすると、マクドナルドのポテトを食べたからと言って髪が発毛するわけではありません。
そもそも今回のニューズウィークの記事で取り上げられたのは、横浜国立大学・理工学部・福田淳二准教授の毛髪再生医療の研究についてです。
まず私たちの毛髪は皮膚にある毛包という器官から生成されます。薄毛(脱毛症・AGA)の方に対して、この毛包に含まれる細胞を移植することで、毛髪を再生することができないかという研究は昔から行われてきました。
そして、最近の研究ではそれらの細胞をかたまりとして移植することで、効率よく毛髪を再生しようという手法が生み出されたんですね。その細胞のかたまりのことを毛包原基(HFG)と呼びます。イメージとしては髪の種みたいなものですね。
薄毛の治療には数千個もの毛包原基が必要となります。しかし、今までは毛包原基を顕微鏡で見ながら手作業でつくらなければならず、たいへん手間のかかるもでした。そのため、実際の治療には使うのは技術的に難しいと考えられていたんですね。
しかし、毛包原基を作製する際に、顕微鏡で見ながら細胞を操作しなければならず非常に手間のかかるものでした。脱毛症の治療には、何千本という単位で毛包原基が必要ですので、大量に作製する技術が大きな課題となっていました。
福田先生の研究チームでは、毛包原基を作成する際の培養器を工夫することでに大量生成させることに成功したんですね。その数なんと5,000。
そして、福田先生が行なった工夫というのが培養器の底に酸素の通過性の高い『ジメチルポリシロキサン』を使うことでした。このジメチルポリシロキサンというのがマクドナルドでポテトを揚げるときに油に入れている物質なんです。
ちなみに大量生成した毛包原基をマウスの背中に注入したところ、有効な毛包となって毛穴が作られることを確認できました。
つまり、マクドナルドのポテトの原材料『ジメチルポリシロキサン』が今回の研究で関連したのは、毛包原基を作成するための培養器の素材においてのみです。
決してマクドナルドのポテトを食べたり、揚げるのに使用している油を頭皮に塗っても髪が生えてくるわけではありませんので、その点は注意してくださいね。
福田先生の研究成果が市場に反映されるのはもう少し先のお話
なお、福田先生が取り組まれている毛髪再生医療の恩恵を私たちが受けられるのは、もう少し先のお話です。今はまだマウスを対象に試験段階ですからね。
しかし、毛髪の再生医療の関する研究は医療機関や大学で盛んに行なわれていますので、それらの再生医療を私たちが受けられる日も近い内にやってくるでしょう。
例えば、自分の後頭部の髪を薄くなった生え際や頭頂部へ移植する自毛植毛手術だって、つい10年前までは国内で施術を受けられるクリニックがほとんどありませんでした。
それが今では湘南美容外科クリニックやTOMクリニックなど多くのクリニックで受けられるようになっています。最近では精度の高い植毛専用ロボット(ATRAS)による自動化まで行われていますから。
【参考】ARTAS自毛植毛の手術当日の流れ@湘南美容外科クリニックへ取材してきた
そのくらい進歩が早い業界なので、福田先生の研究がAGA治療に反映される日も遠くないかもしれませんね。
もちろん、当サイトフサメンでは今後も新しい薄毛治療法や研究について情報を入手次第、サイト内で紹介していきますので、楽しみにしていてください。
■まとめ
今回のニューズウィークで報道されたのは、マクドナルドのポテトを揚げる際に油に入れる『ジメチルポリシロキサン』を毛包原基を培養する容器に使用したら、毛包原基を大量作成できたという内容です。
マックフライを食べれば髪が生えるという主旨のニュースではありませんので注意しましょう。